一般社団法人 生体制御学会
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生体調整機構制御学会NEWS

平成23年11月号
(社)生体制御学会
会長 中 村 弘 典
 
 平成19年8月まで「研究班紹介」と題して研究班の班長の先生より研究班の紹介を頂いておりましたが、9月より、メディアの医療情報の中で研究班に関係する記事がありましたら各班長にコメントを頂き、日頃の臨床に役立てて頂く目的で「生体制御学会NEWS」を発信させて頂きます。
 今回は『睡眠と健康』と題して、生体制御学会研究部不定愁訴班班長の石神龍代先生に以下のように紹介して頂きました。

睡眠と健康

生体制御学会研究部 不定愁訴班班長
   石 神 龍 代
 
 ストレス社会・夜型社会の現在、種々の不定愁訴を訴えて鍼灸院を訪れる患者が増加していますが、臨床現場で鍼治療により質の良い睡眠が得られることによく遭遇します。
 私たちは不定愁訴カルテを使用して、睡眠障害および睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性を証明しました。また、(社)生体制御学会第27回学術集会シンポジウムにおいて皆川らは、主訴に関係なく、初回鍼治療日に63パーセントの人が「いつもよりよく眠れた」と回答したと報告しました。
 今回は、睡眠と健康について紹介させていただき、鍼治療の果たす役割について再認識したいと思います。
 「睡眠は人生の1/3を占める」といわれていますが、睡眠時間だけではなく、睡眠の質も私たちの健康に大きく影響を与えています。睡眠は単なる活動停止の時間ではなく、適応行動であり、生体防御技術でもあることから、Quality of Life(QOL)に関連することも報告されています。
 睡眠障害自体が肥満、糖尿病、高血圧、虚血性心疾患などの生活習慣病に影響するといわれており、睡眠への注目が高まっています。
 一般的に生活習慣病は、喫煙、飲酒、食習慣などの生活習慣の乱れにより引き起こされると考えられていますが、睡眠障害も大きく影響しているといわれています。
 睡眠時間と死亡率との関連では、6〜7時間の睡眠をとる人の死亡率が最も低く、それより少なくても多くても死亡率が高くなるといわれています。2005年のNHKの国民生活時間調査では日本の平均睡眠時間が7時間22分であることから、より適した睡眠がとれていると考えられます。
 睡眠時間と肥満との間にも同様の関係がみられており、6〜7時間の睡眠が最も肥満率が低く、それ以上でも以下でも肥満率が上がるといわれています。これらのことが生じる要因として、睡眠障害自体が身体面に様々な形で関与していると考えられます。満腹の信号であるレプチンの血中濃度は睡眠時間が長い人ほど、空腹の信号であるグレリンの血中濃度は睡眠時間が短い人ほど高いことが示されています。
 また自律神経・内分泌系では、心拍変動の低周波成分/高周波成分の比やノルアドレナリンが部分断眠後に増加するといわれています。
 インスリンに対する影響では短時間睡眠はインスリン抵抗性を高めたり、夜間前半のコルチゾール分泌量を増加させ、インスリン抵抗性を促進するといわれています。その結果、肥満が起こり、高血圧、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患にも影響すると考えられています。
 脂質異常症に関しては、6〜7時間の群は6時間未満及び7時間以上の群に比べて有意に中性脂肪が低くHDLコレステロールが高いといわれています。糖尿病に関しては、平均睡眠時間が7〜8時間以上でも以下でもHbA1cが上昇したとの報告や、不眠を伴う糖尿病患者に睡眠薬を投与して不眠を改善することで、HbA1cの改善が認められたといわれています。虚血性心疾患に関しても、7.5時間未満である場合は将来の心血管イベント発症増加の独立した予測因子といわれています。
 以上のように睡眠障害と生活習慣病とは密接な関わりをあると考えられています。
 また、睡眠障害がうつ病の発症要因になるという報告や、睡眠時無呼吸症候群は身体面だけでなく、精神面にも影響するといわれています。
 このように睡眠と精神・身体は深く関連しているので、身体疾患や精神疾患の治療には睡眠に対し十分に配慮する必要があり、生体の統合的制御機構の活性化を図ることを目的とした鍼治療(生体制御療法)の果たす役割は大きいものと思われます。

文献
 菅 重博、武田彰久、佐々木圭吾、端詰勝敬、坪井康次:生活習慣と睡眠.
  心身医51(9).783‐9.2011.